徳島県南部地域の豊かな森林について
徳島県南部地域は、四国山地を源とする那賀川流域の阿南市、那賀町と、海部山地を源とする海部川、日和佐川などの流域の美波町、牟岐町、海陽町の5つの市町で構成されています。
森林の面積は、徳島県全体の約4割を占め、その豊かな森林資源は災害の防止、水資源の涵養、温暖化防止、木材生産など、地域生活に様々な恩恵をもたらしています。
また古くから林業の盛んな地域であり、戦後の高度成長期には、この地域の川上資本が川下の製材等の木材産業を大いに発展させてきた歴史を持っています。しかし、昭和後期から木材価格が下落を続け、南部地域の林業に大きなダメ-ジをもたらし、山間部の過疎化、高齢化とともに林業が縮小、生産量も減少の一途をたどってきました。
かつて地域の経済を支えてきた豊かな森林資源は、その70%がスギ・ヒノキの人工林で、その比率は全国と比較しても高く、さらに高度経済成長期に多く植林されたスギ・ヒノキの64%が10齢級を越え、木材として利用できるまでに成長しています。
この成熟した人工林資源を背景として、川下では大規模な製材工場の建設、合板材やチップ材の県産材利用に加え、木質バイオマス発電が稼働し、県産材需要は拡大しており、川下からの林業への期待は大きく高まっています。
しかしながら木材価格は依然低価格のままで、この地域の森林の8割にあたる個人や会社で所有している私有林では、林家の多くが個人経営を断念したり、世代交代をきっかけに、森林所有者の不在村化や無関心化が加速し、「相続ができていない」、「境界が分からない」「高齢のため自分では山を管理できない」などといった問題に直面しています。このままでは、次第に、森林が管理不十分となっていくことが懸念されています。
そこで、徳島県南部地域の豊かな森林資源の循環利用を進め、県産材生産を拡大することで地元に利益を還元する「林業の成長産業化」と、適切な山の管理を行うことで、森林のもつ多面的機能を向上し、地域の安心で安全は生活を守る「森林環境の保全」が求められています。